小雪~虹蔵不見(にじ かくれて みえず)~
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みなさんこんにちは♪
インストラクターの秋丸です。
~本日も季節のおたより~
冬の足音が近づく空気の変化
小雪の頃は、北寄りの風が増え、空気の冷たさが一段と鋭く感じられてきます。朝、玄関の扉を開けた瞬間に、ひんやりと頬を刺すような空気が入り込み、「冬が来たなぁ」と実感します。外を歩けば、マフラーを巻く人や手袋をつける人やポケットから手が出ない人が増え、冬支度が本格的に始まったことが肌でわかります。
この時期には、空の美しさにも特徴があります。昼間は淡い水色が広がり、夕方は茜色から紫へとゆっくり溶けていくようなグラデーションが見られます。虹が姿を見せない代わりに、空の色そのものが季節の移り変わりを知らせてくれるのです。日没が早くなり、夕焼けが一瞬で夜空へと変わる様子は、まさに“季節の切れ目”を感じさせます。
自然と暮らしの冬じたく
小雪を過ぎると、自然界では冬を迎える準備が本格化します。動物たちは冬毛をまとい、木々は葉を落とすことでエネルギーを蓄えます。人の暮らしでも、暖房器具のチェックや加湿器の準備、衣替えなど、冬を迎えるための小さな段取りが日々の中に増えていきます。こうした一つひとつの行動が、季節と共に生きるリズムを感じさせてくれます。
また、冬が近づくにつれて、温かい食べ物がより一層おいしく感じられるようになります。煮込み料理やお鍋、冬野菜を使ったスープなど、身体を芯から温めてくれるものが恋しくなる季節です。外の冷たい風と室内の暖かさ。そのコントラストもまた、この時期ならではの心地よさです。
見えないものに耳を澄ます季節
「虹蔵不見」という言葉には、虹が見えなくなるさみしさだけでなく、季節が次へと進んでいく美しさが込められています。見えないものの中にも確かな気配があり、冬という新しい章が静かに開かれつつあるのです。虹が空のどこかに隠れているように、私たちの日常にも、目には見えなくても確かに存在する“変化のサイン”があります。ふと感じる寒さ、風の音、澄んだ空気—そんな小さな気づきが、季節の深まりを優しく知らせてくれます。
今日はぜひ、空を見上げてみてください。虹は見えないかもしれませんが、その代わり、冬の訪れを予感させる澄んだ光が広がっているはずです。忙しない日々の中で、季節の移ろいを丁寧に受け止める時間は、心の余白をつくってくれるもの。小雪の季節がもたらす静けさと、七十二候の言葉が伝える自然のメッセージを、どうぞゆっくり味わってみてください。
七十二候とデジタルな暮らし
私たちの暮らしは、パソコンやスマホなしでは成り立たないほど、すっかりデジタル中心になりました。オンライン会議やメール、SNS、デジタル教材…画面の中では、季節に関係なく同じデザインのボタンをクリックし、同じような表示を見ています。便利な一方で、気がつくと「今はどんな季節だったかな?」と、外の変化から心が離れてしまうこともあります。
そんなときこそ、七十二候のような「ゆっくり進む暦」を、デジタル環境にあえて持ち込んでみるのもおすすめです。パソコンやスマホのカレンダーに二十四節気や七十二候を書き込んでおくと、予定表を開いたときに「今日は小雪・虹蔵不見なんだ」と、季節の一言メモが目に入ります。タスクや締め切りだけがずらりと並ぶ画面に、ほんの少しだけ柔らかい余白が生まれます。
また、七十二候を意識してお知らせ文書等のテーマや色を変えてみると、同じパソコン操作でも「季節の授業」になります。たとえば、虹蔵不見の頃なら「冬の空の写真を集めてスライドを作る」「今日の空の色をスクリーンショットに撮ってタイトルをつける」など、画面の向こうにある“外の世界”を感じるきっかけにすることができます。
デジタル機器はどうしても時間の流れを速く感じさせますが、七十二候は一つひとつの変化をていねいに味わうための、もうひとつの時計のようなものです。忙しい毎日の中で、画面越しに季節のことばをそっと差し込んであげると、心のスピードをすこしだけゆるめてくれます。便利さと共に、季節を感じる豊かさも、同じテーブルに並べておきたいですね。

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